サーバントリーダーシップ協会というのがあるのだそうです

11月7日 クリスチャントゥデイ誌より

第1回サーバント・リーダーシップフォーラム
開催2011年11月01日


 10月26日、第1回サーバント・リーダーシップフォーラムが東京都港区グランパークプラザで開催された。東日本大震災を経て、戦後最大の国難にある日本において、あるべきリーダーシップのあり方が欠けていることが問題であることが同フォーラムで指摘された。

 現代社会にふさわしいリーダーシップの有り方について、企業リーダーとしての経験豊富なゲストらが招かれ講演が行われた。フォーラムには一般企業会社役員から自営業などさまざまなジャンルの職業で課長・部長職に就いている人々を中心に110名程が参加した。講演者は基調講演にアフラックアメリカンファミリー生命保険会社)創業者・最高顧問の大竹美喜氏、講演者としてサンクゼール代表取締役久世良三氏、コマツ常務執行役員日置政克氏が招かれた。

 基調講演を行ったアフラック創業者・最高顧問の大竹美喜氏は、「今の時代に求められるリーダー像」について語った。大竹氏は、1974年に国内で初めてのがん保険の販売をスタートさせ、その後同社副社長、社長、会長を歴任し2003年より最高顧問となった。

 大竹氏は未曾有の大震災から7カ月が経過した現代日本社会の国難を乗り越えるためにも、日本のリーダー達のリーダーシップの取り様が問題であると指摘し、今の時代だからこそ「リーダーシップの発揮の仕方とはどうあるべきなのか」を考える必要があり、「このたびの震災の政府の対応を見ておりますと、どうにも歯がゆい思いを禁じ得ません」と述べた。

 大竹氏は「リーダー」という言葉について「絶対に自称することは許されず、他の人が敬い頼ることができる人にのみ与えられる他律的称号である」と述べた。「リーダー」という言葉は、本来日本語にない言葉の一つであり、その定義について誤認されがちであることも指摘された。大竹氏は国内でアフラックを創業する前の米国留学中に、地元教会の日曜礼拝に参加し、洗礼を受け、牧師のアシスタントとして布教を手伝ったことや、米国アフラック創立者の一人であるジョン・B・エイモス氏との出会いを通じて大きな価値観の転換を経験した。大竹氏は「サーバント・リーダーシップとしての模範を見せた方こそがキリストであり、多くのリーダーシップ研究者も歴史上最も信頼され、尊敬されたリーダーこそが、キリストである、と言っています」と述べた。キリストのリーダーシップが光る理由としては、「形式より内容、周辺よりは本質、結果よりは心の状態を強調し、すべての人が変化し発展するチャンスを提供したこと」が挙げられるという。真のリーダーはキリストのように相手に配慮する心が存在することで、他人の心を動かし、状況を積極的に変えるパワーの源泉となる存在であるべきであるという。
 またリーダーシップの本質として、個人が夢を持っており、その夢を実現させようとする強い意思を持ち、行動を起こす姿勢が重要であるという。一方その歩みを始めたときは、一人称の夢を実現すべく始めるのであり、それは孤独な歩みでもあるという。その夢が最初は誰にも見えず、動きの中で少しずつ理解者が増えていって、振り向いたら大勢の人がついてきてくれていたというような、「私の夢」が「我々の夢」となるようになっていくべきであるという。そのためにもリーダーがマネージャーと異なる大きな点として、マネージャーは今日一日の算段を行えば良いが、リーダーは10年先を読まなければならない点を挙げた。

 音楽の世界で言えば、本当に頭が下がるような立派な指揮者は、誰よりも先に頭を下げており、「音楽を成り立たせるのは演奏をするあなた方で、私ではない」「私はオブザーバーであり、モデレーターに過ぎない」という謙虚な姿勢をとっているという。一方でリーダーシップをとる人物が、激変する環境にあって何の方向も示せないのでは、最悪の場合企業倒産や失業を導いてしまうため、リーダーシップの「本質」を失わないリーダーのあり方が重要であると強調した。

 大竹氏は今求められるリーダーとは「高い志」を持ち、「ぶれない信念」を持っている人であるという。そして何よりも「人間力」が必要であり、「尊敬されなければ誰も付いて来ません」と指摘された。リーダーはリスクを請負い、進むべき方向を見据え、リーダーシップを発揮できてこそリーダーと言えるという。

 未曾有の国難を突破するためにも国民一人ひとりが意識改革することが必要で、国をはじめとする国家機関、企業、学校、家庭あらゆる組織の中で本物のリーダーが求められているとし、「多くのリーダーと言われる人々は権力や地位で人を動かそうとしますが、このような人が権力や地位を失ったら人がついてきてくれるかどうか分かりません。これは本当のリーダーシップとは言えません。この度の東日本大震災は、1000年に一度の甚大な災害をもたらし、国家の非常事態を招きました。この大震災の被害を不幸な出来事としてのみ捉えるのではなく、今回の危機が不幸中の幸いとなって、今こそ、個が確立し、リーダーが多く育つチャンスではないでしょうか。一人のリーダーの志がいつもこの国を救う糸口となること、『志民』の力は強い、ということを皆さまにはわかっていただきたい。自分の信念をしっかり持ち、ぶれない座標軸を定めていただきたいと思います。日本の復興・復活なくして日本経済、世界経済の回復はあり得ません。新生日本、復活の鍵を握っている皆様方それぞれがリーダーであることを心に刻み、この国を牽引していただきたいと思います」と述べた。

 その後、聖書の精神に基づく正しい経営活動を行うことを経営理念とする企業サンクゼール代表取締役社長の久世良三氏より「長野から世界へ、サンクゼールの挑戦」と題した講演が行われた。久世氏は会社経営難に陥った際に夫人が毎晩聖書の御言葉を読み励ましてくれたことが危機的状況を救ってくれたことを証しし、その後聖書に則った経営を行う決断をするようになったという。久世氏の会社では社内で聖書を学ぶ会を開いており、社内でも人気を集めているという。リーダーシップを発揮する人間として常に謙虚さと素直さを大切にし、言葉と行動が一致するようにすることが大切であることが指摘された。

 コマツ常務執行役員の日置政克氏は「グローバルリーダーに求められるもの」と題した講演を行い、グローバル企業のリーダーとしてふさわしい人格やチームのあり方について、同社のグローバル経営方針を基に指摘がなされた。日置氏は同社の組織体制について、チームワークはリーダーとフォロワーによって成り立つものであり、ひとりひとりがカリスマではなく、ひとりは万人、万人はひとりのためという精神でチームが成り立っていることを説明した。海外支社での経営については、経営を現地の人間が行い、日本人はナンバー2として支える立場に回っているという。その他コマツの価値観・心構え・行動様式を明示した「コマツウェイ」についても紹介された。コマツウェイではグローバル企業として現地の人が現地経営を行うとしても「グローバルにここだけは守り続けたい、人が変わっても、脈々と受け継いでいって欲しい、先輩が築き上げてきた、成功・失敗の経験、強さを支える価値観、心構え、行動様式」をまとめており、コマツウェイの教育を通じて世界中の社員が価値観を共有し、全世界のコマツグループとしての社員や組織の活性化を図っているという。

 今回の後援の総括として最後にサーバント・リーダーシップ協会理事長真田茂人氏から「サーバントリーダーシップの必然性」と題された「サーバントリーダー」の説明がなされた。真田氏は「リーダーシップは『ついて行きたい』というフォロワーがいてくれて成立するものであり、フォロワーが『ついて行きたい』と思わなければ、そこにリーダーシップは機能しておらず弱いリーダーシップ状態であること」、リーダーシップを強化するためには「目指す目的が魅力的」であり「リーダーの影響力」が強いことが必要であることを説明した。リーダーとしての影響力の源泉としてはその人の実質的な能力よりも「人としてのあり方」や「良好な人間関係」を構築できるという人間性が重要となってくることが指摘された。また国内の成熟した経済環境下においては、右肩上がりの高度経済成長期と異なり、ただマネジメントするだけのリーダーではなく、変化へ対応し、創意工夫することができる「変革型リーダー」が必要とされていることが指摘された。真田氏はサーバントリーダーシップについて「自分が信じる価値あるミッションやビジョンに『奉仕』し、それを推進してくれる人たちに『仕える』」ことであると説明した。

 従来の君臨支配型リーダーとサーバントリーダーの違い、および現代情報社会において君臨支配型リーダーがもはや機能しないことについても指摘された。君臨支配型リーダーでは自分の成功、自分が称賛されること、自分の経済的欲求に野心の方向が向いており、リーダーが主役で『私』が強調され、メンバーはリーダーのために存在し、メンバーを『私』のためにうまく使うこと、コミュニケーションが一方通行で指示・命令が中心であるなどの特徴が見られるが、このようなリーダーは「情報統制できる社会」でのみ存在可能であるという。現代のような多様な企業の情報や転職の機会、様々なニュースに接することのできる情報化社会においては、サーバントリーダーとして「大義と魅力のあるミッションやビジョンを有し、チームや組織の成功に野心の方向が向けられ、リーダーではなくメンバーが主役となり、リーダーがメンバーのために存在し、ミッションやビジョンの実現を推進してくれるメンバーに『奉仕』できる」ようなリーダーのあり方が時代の要請として求められていることが説明された。

 サーバントリーダーシップ協会では定期的にサーバントリーダーについて学び、リーダーとして活躍している人の話を聞き、あるべきリーダー像について、いろいろな人と話し合う機会が設けられている。活動の詳細はホームページ(http://www.servantleader.jp/seminer.html )まで。