よきおとずれ原稿(2009年)「私たちの負債意識は」武田信嗣

 今年はプロテスタント日本宣教百五十周年ですが、実は来年は世界MB百五十周年の年になります。一つは横浜に始まり、一つは遠くウクライナ黒海の北)の入植地、モロッチナにおいて始まりました。二つのルートは全く異なったものですが、百五十年前、両方ともが、使徒の働き一章八節の「エルサレムユダヤ〜サマリヤの全土〜及び地の果てまで」という本流に沿った聖霊の働きによってもたらされたのです。ですから、私たちは両方の百五十周年を心から喜びたいと思います。

 そのようなわけで、来年四月二十九日(木)は、世界MB百五十周年も覚えつつ、日本MB六十周年大会を中之島中央公会堂で開催できることは幸いなことです。もちろん世界大会も開催されることになっています(ドイツにて)。それに合わせてMB発祥の地、ウクライナ旅行も海外では企画されていると聞きます。

 私たちは、迫害をものともせず、宣教の情熱に満たされて伝えられた福音に感謝以外の言葉はありません。と同時に、先日、海外宣教委員会作成の、海外宣教デーに配布された、あのパンフレットを手にして感動を覚えました。派遣のあり方は異なるものの、今日まで日本から海外に送られた宣教師がこんなにも沢山おられたのかとうれしく思いました。今年は浜名夫妻がタイに派遣され、来年は額賀夫妻が同じくタイに派遣されます。

 メノナイトのシェンクという宣教学者は、十年以上前に次のような興味深いことを語っています。「これからの宣教は派遣する教会の再生と密接に結びつく。」つまり、私たちは、オランダ〜ウクライナ〜北米から伝わった長い歴史から多くのことを学び続けますが、それと同時に、これからは、私たちが派遣した宣教地、例えばタイ宣教から多くを学んでいくことになるのではないか。また私たち日本MBは、タイ宣教から驚くべき再生を頂くことができるのではないかと予感しても良いのです。確か在米韓国教会でも、次世代に向けての教会再生のために、若者たちに、異文化への宣教地訪問、宣教旅行企画を熱心に勧めていると聞きます。

 パウロは自分の宣教への思いを、「負債」という言葉で表しました。彼の負債意識は、ローマ世界のあらゆる民族に向けられたのです。「私は、ギリシャ人にも未開人にも、知識のある人にも知識のない人にも、返さなければならない負債を負っています。」(ローマ一章十四節)

 彼は未信者時代、多くの信者たちを迫害したにもかかわらず、回心後は、彼によって迫害された信者たちに温かく迎え入れられ、キリスト教の指導者となった方です。ですから、彼の負債意識はそのような人たちに向けてもよかったと思うのですが、パウロは申し訳ないという負債意識を救われていない多くのローマ世界の人たちに向けたのです。

 そのような彼は、自分の創造的な負債意識のゆえに、苦難を経験しつつも慰めを経験し、迫害を経験しつつも喜び踊ることを経験し、信仰の醍醐味である、「艱難〜忍耐〜練達〜希望」(ローマ五章三・四節)に至る道を見いだしたのです。

 さあ、私たちも、今、世界大の宣教最前線のこの地にしっかりと立ち、先に救われたものとして、パウロの負債意識に共感しつつ、イエス様のご紹介をし続けていきましょう。