「敬虔主義とアナバプティズム」2

「歴史的敬虔主義は、アナバプティスト運動への熱意の多くが冷めたころに現れ、そしてアナバプテストの土壌で最も繁茂し、ヴュルテンベルクのようなアナバプティストの活動拠点で力を得た。一般の人々は、敬虔主義者という名称とアナバプテストという名称とをしばしば同義語的に用いていた。「霊の花園」という書物が広く敬虔主義者たちに読み知られていたが、それにはハンス・デンク、ハンス・フート、ヨルク・ハウク・フォン・ヤクソン、アイテルハウス・ランゲルマルテルなどによる著述が含まれていた。ラディカル敬虔主義者であるゴットフリート・アルノルトは、その記念碑的著作である「無党派的な教会史と異端史」において反対者たちのお決まりの論争的著作ではなく、元々の原典資料に照らしてアナバプテスト主義を評価した最初の一人であった。アナバプテスト主義と敬虔主義とは、宗教改革を完成させたいという願望を共有していた。彼らは共通して、聖書の正しい理解を教え聖霊の導き、原始教会回復の思想、再生の中心性、そしてキリストに倣うこと、山上の説教、信仰の実としてのキリスト者生活という倫理的モチーフに対する信仰を抱いていた。シュペーナーはルター派の人々に対して、身近にいるメノナイトの人々の非の打ちどころのない生活スタイルを強く望んだが、ある種の教理問題について、彼らは意見が合わなかった。他方でアナバプテストの学者たちは、アナバプテストの人々にとって新生は、たとえ苦難のなかにあってもキリストに従っていくことを意味したのに対して、敬虔主義者たちにとってそれは、安らか心情と個々人の救いの確信を意味していたと考えてきた。集められた人々が教会を形づくることに非常な強調点を置くアナバプテストとは対照的に、敬虔主義の小集会は、共同の服従や訓練のためというよりも、むしろ個々人の教化のための再生者の集会として説明されてきた。」(「敬虔主義、そのルーツからの新しい発見」デイル・ブラウン、梅田興四男訳、35〜36頁)